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マンションから飛び出して宛もなくブラブラ歩く。
頭の中には、あのメールの内容がグルグルと廻っていた。
“昨日みたいにまたいっぱい愛してね”
昨日俺は、コンサートで地方に泊まっていた。
――そりゃ遠慮なく浮気相手と過ごせたよな…
自嘲気味に笑いながら暗い夜空を見上げた時、携帯の着信音が響いた。
誰なのか見当がつくから敢えてスルーしてたのに、あまりのしつこさに諦めて電話に出る。
「なに?」
ぶっきらぼうな俺の態度に、少し戸惑いながら
「和也?どこにいるの?
一回家に帰ってきたんだろ?
何で俺を起こさずに出て行ったんだ?」
多分、携帯を開きっぱなしで眠ってしまった事に慌てたんだろう。
探るような口調で立て続けに質問をする相手に、さらに気持ちは冷めていく。
「別に…
俺、今日は戻らないから
ちゃんとベッドで寝ろよな
じゃ…」
電話の向こうで何か声がしていたけど、聞く耳を持たずに携帯を閉じた。
虚しさが体中に広がる感覚。
何だか、総てがどうでもよくなった…
――もう、あいつとは終わりかもしれない…
ぼんやりと考えていると、再び鳴り出す携帯。
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