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後ろから声をかけられて、ビクリとした背中を見て
――ああ、可愛いかも…
なんて思った自分の心は見ないふりをして
「なぁカメ、何で?」
本当はもうそんなに怒ってないのに、わざと尖った声で問い詰めてみた
こっちに振り返りもせずに
「ゴメン、音消してたから気づかなかった」
なんて言うカメに、またちょっとムッとしたから、腕を取ってこっちに振り向かせ顔を覗き込んだら
――何でそんな辛そうな、泣きそうな顔してんの?
ひどく脆そうな雰囲気に何も言えず
「送ってっから」
そっと腕を掴んで、自分の車へ導いた
大人しくついてくるカメを車に押し込んで、自宅への道を沈黙のままにひた走る
その間に何か聞き出そうとしたんだけど、何だか今は触れてはいけない気がして
何も聞けないままにマンションへ到着した
ありがとうって礼を言って降りるカメに言い出せたのは、たった一言
「カメ、大丈夫だよな…?」
消えてしまいそうで
怖くて……
大丈夫だよ、なんて儚い笑顔を向けられて
不安になった
いつもは見送られながら車を発進させるのに、今日はマンションへ入るカメを見送る
――見送る事って、こんなに寂しかったっけ…?
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