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「つまり、先輩の思いを成就させるために、僕に手助けをさせて頂きたいと言う訳です」
「……なるほどね」
確かにその手の事だったら、英とかよりは同じ男であるこいつにやってもらった方がいいのかもしれない。
「でも、仮に私がそれを受け入れたとして、あなたに何の得があるの?」
「……僕は、先輩の事が好きなんです。
でも、先輩が真田先輩の事を好きである以上、僕のこの思いが成就される事は無い。
だったら、せめて好きな人が幸せになれるように、何かをしたいんです」
「ふーん……」
真剣な目つきでそう語るそいつを見て、私はストーキングしていた事は忘れ、こいつの提案に乗ってみるのもありかもしれないと思った。
「普段だったら、そんな軟弱な事は言うなと言う所だけど。
わかった、あなたの提案を受け入れさせてもらうわ」
「本当ですか!?」
「ええ。
私には利益しかないわけだし、あなたがそう言うのなら断る理由はないわ」
「やったー!」
私が提案を承諾すると、そいつは跳び上がって喜びを露わにした。
「ちょっと、勘違いしてもらっては困るわ。
あくまで協力するってだけで、名称はそうだとは言え、私はあんたを彼氏にするつもりはないから」
「わかってますよ。
でも先輩の力になれることが嬉しくて!」
そいつは無邪気な笑みを浮かべつつ、私の発言にそう答える。
「まあいいわ。
そういう事だから、今後はあんたを名前で呼ばせてもらうわね。
よろしく、柔」
「はい、よろしくお願いします、先輩!」
「それじゃあ、早速明日から取り組みたいと思うんだけど」
「お任せ下さい!」
柔はそう返事をすると、軽やかな足取りで部室を出て行った。
「……何だか変な奴ね。
まあいいわ。あいつの策がきちんと実行できるように、私も自分を磨いて置かないと」
こうして、私には自分の思いを成就させる為の、2番目の彼氏が出来たのだった。
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