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「せっ、先輩はその……。
私の事をどう思いますか?」
「えっ?」
「あ、その、別にいやらしい意味はないですよ?
ただ、問題を解決する為には、まず己を知る事が重要かと思いまして」
「……ふふっ」
「ど、どうしたんですか?
いきなり笑い出したりして」
「いや、ちょっと残念だと思ってね。
俺としては、別にそういう意味でも良かったんだけど」
「なっ!」
先輩がそう言った途端、私の顔は真っ赤に染まる。
「そんな反応するなよ、ただの冗談だ。
で、楠の印象だったよな」
(……何だ、冗談だったのね。
それにしても、先輩がこんな事を言うなんて)
先輩に違う印象を見せる予定が、逆に先輩の違う面を見せられてしまった。
「そうだなあ。
純真無垢で、ただひたすらに武の道を進み、自他に厳しく……。良く言えば真面目、悪く言えば柔軟性が足りない、まとめるとこんな所だ」
「なるほど……」
私はうなずきながら、先輩の言葉に耳を傾ける。
「後、綺麗でスタイルがいい。モデルをやっても行けそうな位だ」
「なっ……!!
も、もう、冗談は止めてください!」
「冗談なんかじゃない、これも真面目に言った言葉だ。
信用するしないは任せるが、これが俺の楠に対する印象だ」
「そうですか……。
ありがとうございます、おかげで自分が少し見えてきました」
「いや、これで楠の力になれたんだったら嬉しいよ。
面白い物も見れたし、な」
「?」
「楠って、本当は可愛い奴だったんだなと思って」
「!!
な、何をいきなり……」
「それだよ、その反応がとっても可愛い。
いまどきそんな風にしてくれる子なんて、楠しかいないだろうな」
「せ、先輩は意地悪です……。
そんな風に私をからかう人だなんて、思ってませんでした」
「おっと、これは機嫌を損ねたかな?
でも、それだけ俺たちは、お互いの事を良く知らなかったって事だ」
「……そう言われるとそうですよね。
何だか不思議ですね。ほぼ毎日部活で顔を合わせているのに、お互いの事をほとんど知らないだなんて」
「そして、それによる損失もかなりの物……。と言う訳で、そろそろ出るとしよう」
「あ、そうですね。
先輩、今日はどうもありがとうございました」
「何言ってるんだ?
俺はこの後も、楠と行動を共にするつもりでいるのだが」
「はい?」
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