序章:2番目彼氏の出現

4/10
前へ
/30ページ
次へ
「上から順番に、艶やかな黒髪、美しい顔立ち、陶磁器のような白い肌の強調されるうなじ、強く握れば折れてしまいそうな腕、豊満なバスト、引き締まったウエスト、形の良いヒップ、すらりと長く伸びた足……。 よく見なくたって、静かにはこれだけの武器があるのよ!」 英はやや息を荒くしながら、胸とお尻に置いた手を動かし続ける。 「調子に……、乗るなー!!」 私はカチンと来て、思わず英を投げ飛ばした。 「さ、さすがは鬼と呼ばれる強さ。空手部部員なのに投げ飛ばすなんて」 「私だって、気が向けば投げる時だってあるわよ。 って言うより、見なくてわかる武器しか洗い出せてないって事は、何も思いついてないって事じゃない」 「いや、まあそうとも言う」 「……まあ、自分で考え始めた時から、英にはあまり期待して無かったけど」 私はそう呟きながら、自分の体に目を通していく。 「……腕や足が細いと侮られるから、本当は多少太い方がいいんだけど。 それに胸だって、動くのに邪魔なだけじゃない。ただでさえ最近また大きくなって来たって言うのに」 「何ですとー!?」 すると、それを耳聡く聞きつけた英が復活して、怒った様な表情で近づいて来る。 「あんた今、全国の相当数の女性を敵に回したわよ! あんたみたいなスタイルになるために、世の女性陣がどれだけ苦労していることか!」 「いや、それ英だけじゃないの?」 「そんな事は無いわ! 古来から女性の象徴とされている大きな胸に憧れを抱かない女性なんて、いるはずがない!」 「……英の発想って、思春期の男子みたいね」 「ええそうよ、私は思春期真っ只中の花の女子高生! 故に、あんたみたいな自分の美しいスタイルに不平を言う人間が恨めしい!」 英はそう叫びながら、懲りずに再び私の胸へと手を伸ばしてくる。 「だから、やめなさいっての」 突進して来る英を一発引っぱたいたところで、昼休み終了のチャイムがなった。 …… (胸、ねえ……) 放課後の練習中、道着の間から自分の胸を覗き見る。 (これが武器になるんだとしたら、世の中って本当に上手く行かないものだわ。 誇りが邪魔になり、不必要なものが武器になるんだから) そのまま私がため息をついた瞬間、何かいつもと違う視線を感じた。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加