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「あの、これは……」
「やっと口を開いたわね。
私が鬼って呼ばれてるのは知ってるでしょ?それが稽古の時となったら余計にそうだって事も」
「つまり、バテた所で吐かせようと」
「理解が早くて助かるわ。
それじゃあ、早速始めましょうか」
「と言っても、これから授業なんですが……」
「うるさい、さっさと行くわよ!」
私はそう宣言すると、後輩が誰もついて来れなかった位の厳しい稽古をそいつに課した。
……
「ま、まさか。
これに耐え切るだなんて……」
時計を見ると、もう昼休みになっていた。それまで休憩無しで稽古をしていたにも関わらず、そいつはまだまだやれそうな顔をしている。
「誤解してたわ、あなた見込みあるわね。
私が無茶を言っても、逃げ出そうとするそぶりを全く見せなかったし」
「まあ、ここまで来たらとことん付き合うしかないと思いまして」
「そう……。
で? いい加減吐いてくれる気になったかしら」
「ええ、まあ。
でもその前に、先輩が取調べを受けないといけないようですけど」
「え?」
そう言われて部室の入り口を見ると、顧問の先生が鬼の形相でこちらを見ていた。
「やっば……」
「それでは、また放課後にお会いしましょう、先輩」
青ざめる私に対し、そいつはそう言い残して部室を出た。
……
「全く、酷い目にあったわ」
放課後、部員の稽古を見ながらそう呟く。
「自業自得だろ?
午前中の授業ずっとサボって稽古してたんだから、むしろそれ位で済んだと思わないと」
「あ、先輩!」
そこに、真田先輩が呆れ顔で現れた。
「稽古が好きなのは結構な事だが、授業をサボるのは感心しないな」
「す、すみません……」
先輩にそう注意されて、私はしょぼんとうな垂れる。
「ま、でもそこが楠のいい所か。
だが今後は、こういった事がないように」
先輩はそう言って私の頭を軽く叩くと、そのまま部室を出て行った。
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