序章 人力車をひく女

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――――――ねえ、そこの旦那さん。 どうしたんだい? 何か探し物かい? 捜し物なら手伝ってやろうか。私も客がいなくて、ちょうど退屈してたところなんだ。 え、ここは何処だって? アンタ、そんな事も知らないの? ここは「黄泉路」さ。もう少し奥まで行きゃあ、三途の川があるよ。 はあ? 別にふざけちゃいないよ。 なんだい、人が親切に答えてやったってのに。 日本? ああ、それはあっちの世界のことじゃないか。とうきょう? ……アンタ、死んじまったからここに来たんだろ。何さ、豆鉄砲くらった鳩みてえな顔して。 だから、田舎じゃなくて黄泉路だっつってんだろう。分かんねえ人だね。
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