序章 人力車をひく女

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確かに清楚でおとなしそうな人だね。 まあまあ良いとこのお嬢さんって感じだ。 …………気が変わった。 いつもは三途の川までしか乗せてやらないんだけど、旦那さんにゃ特別にもう一回「あっち」を見せてやろうじゃないか。 なんだい、「あっち」に帰りたいんだろ? 帰れるかどうかは知らないが、「見せて」やることはできるよ。 どうする? 奥さんと娘さんに「会う」ことはさすがに出来ないけど、「見る」ことは出来るよ。 ――――そう、行くんだね。 アンタ本当に分かってるのかね。 「何を?」って……まあいいさ。 これから見に行くところはアンタの帰る我が家なんかじゃない。 地獄よりもっと醜い「ぢごく」めぐりの旅になるよ。
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