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「さてと…この泥だらけの身体をどうにかしないと。」
周りを見渡す。
目に映り込むのは針葉樹の群衆と降り積もった雪だけだった。
「こんな山奥に捨てなくてもいいのに…」
チッと小さく舌打ちをすると泥にまみれボロボロになった服を脱ぎ捨て、降り積もった雪で身体を洗った。
「あぁ…気持いい。」
真っ白な雪は再生の象徴。
文字通り…
僕を“再生”してくれる。
「あの…だ・大丈夫ですか?」
背後から静寂を破り声が響き渡った。
声のする方に身体ごと向きを変える。
そこには…
ゆるく波打つ栗色の髪。
黒目がちな大きな瞳の少女が立っていた。
「キャッ ごめんなさい!」
そう言うと、顔を両手で覆い後ろを向いてしまった。
「あ、ごめん。服が泥だらけでダメになっちゃって…」
少女は少し間誤つくと、肩にかけたケープを取り後ろを向いたままそっとこちらに渡してきた。
「ありがとう。」
僕はケープを受け取り身体に巻いた。
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