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今日は気分がいいので、雪を見ようと散歩に出た。
心が洗われるような…
美しい銀世界。
シンと静まりかえった森の中。
塵一つない澄んだ空気に、いつもはゼイゼイと嫌な音の鳴る胸が穏やかだった。
だから私は雪が好き。
まるで、病気が治ったかのような錯覚に陥れるから。
「あぁ…気持いい。」
え?
人の声?
一瞬で“興味”の虜になった。
こんな山奥に人なんて…
お父様やお母様はおろか、お医者様すらもう私に会いに来ることはない。
人里離れたこんな山奥に訪れるなんて、何か“訳”があるに違いないわ。
“良い事ではない”と頭の中で警鐘が鳴っている。
だけど…
久しぶりの“人の声”に私の心は躍っていた。
細心の注意を払って、木の陰からそっと覗き見る。
降り積もった雪に同化してしまうほどの白く透き通った肌。
それとは反対に夜を思わせるほどの漆黒の長い髪。
美しいルビー色の瞳。
まるで雪の妖精のようだわ。
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