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歩きなれた様子で彼女は雪道を行く。
「ねぇ、あなたのお名前を聞いていなかったわ。私はエリカよ。」
「僕は…」
僕に名前などない。
周りを見渡す。名前になりそうな物を探す…
見渡す限り、冬の木々と雪だけ。
「…雪」
「え?雪?」
「そう。僕の名前は“ユキ”」
「まぁ!素敵な名前!よろしくねユキ!」
そう言ってスカートを指先でつまむと、澄まし顔でお辞儀をした。
数分歩くと目の前にレンガ造りの小さな小屋が現れた。
「さぁ、入って!」
エリカに促され小屋の中へ入る。
小さな暖炉に小さなテーブル、色鮮やかなランプや小物。
そして…
物々しい機械類の設置された大きなベッド。
「…エリカは病気なの?」
僕の問いに、エリカは一瞬悲しみを瞳に浮かべた。
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