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窓から射し込む光が顔に降り注ぐ……
全身が軋むように痛い。苦痛の表情を浮かべながらも、俺の眠りを妨げる太陽の光から逃げる様に身体を逸らす。
「朝よ、起きて……あ・な・た」
透き通るような美しい女性の声が耳元で囁く。微かにかかる息がくすぐったい。
普通の男性ならこんな美しい声に囁かれでもしたら、たとえどんなに体中が痛くても直ぐにでも飛び起きて、声の主を確認したくなるだろう。
そう、“普通”ならーー
別に俺が普通じゃないって訳じゃない。ただ俺にはこの声が素直に喜べない声だった。
「ねえ? 起きぃぃ……てっ!」
「……ぐふっ」
腹に激痛がぁぁぁ?!
痛みに耐えかねて目を開けると肘を腹にめり込ませ、にこやかに俺の顔を見つめる一人の少女。
「あっ、やっと起きた?」
「レ、レイン……」
「なによ、その人を化け物でも見るような顔して。昨日私にボコられて気絶していたのを、わざわざ宿まで運んであげた恩人に対しての顔かしら?」
あまりにも理不尽な怒りを俺にぶつけた……ってか、エルボーを腹に放ったコイツは、腰に手をあて、不機嫌そうにベッドに横たわる俺を見下ろす。その顔はまだ幼さが残る少女である。
少女の名は、レイン。
流れるような美しい金髪は腰まであり、意思の強そうな大きな目に茶色の瞳、身長も150もあるだろうか? 細身で華奢な身体つきの少女だった。
そんな容姿とは裏腹に、世界中の賞金稼ぎや強者達に狙われる、いわゆるお尋ね者“賞金首”って奴である。
そんな賞金首にヤられた俺を何故宿に?
正直、レインに吹っ飛ばされた後の記憶が全くない。
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