賞金首の少女

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 辺りを見渡しても、全く見憶えの無い部屋。  二つ並んだベッドと簡易なテーブル、椅子が置いてあるだけの飾りなど何も無い、なんとも殺風景な部屋だ。レインが言った通り、宿の……しかもかなり安い一室に間違いないようだ。 「まったく、あの程度の腕で私を狙うなんて、あなたって命知らずね」  「ぐっ…」と、あっさりと負けた俺には言い返せる言葉なんてない。  ホントにあっさりと負けた。この美しい少女に……  そう、彼女の顔は見惚れてしまう程、可愛いくも美しくもあった。その大きな瞳は宝石の様に輝き、小さいながらも形の良い鼻とピンク色の小さな唇、だれが見ても美少女と呼ぶであろう容姿をしている。 「なあ、何故アンタの賞金を狙った賞金稼ぎの俺を助けたんだ?」  普通に考えても自分を襲った俺をわざわざ助けてあげる理由など一つとしてある筈が無い。  そんな俺の質問に対し、レインは大きな瞳をパチクリとし、不思議そうに人差し指を顎に当てて小首を傾げている。 「ん? 殺される方がよかったの?」 「まさか! 生きていたいです……」  可愛いらしい仕草でなんて恐ろしい事を言うんだ。確かに俺なんて楽にあの世行きにすることができるだけの実力が実際にあるのは身をもって体験している。 「でしょ? まあ、別に意味も無く助けた訳じゃないのよ。 私があなたを助けたのはね、あなたの事をーー」 「えっ?」  一瞬、ドキッとしてしまった。彼女が何を言おうとしているのかーー俺の心臓が次第に異常なまでに早く鼓動していく。  おいおい、コレってまさか?  高速で脳内変換されていく、目の前の少女とのこれから訪れるでバラ色に包まれた如何わしい妄想。  生まれてこのかた18年。  女の子に告白する事も、された事もない俺にとっての春が……春が……  ついに春が来るのか!?
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