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大雨が降る中、傘もささず
濡れながらたたずむ少女が一人。
その左手には、緋の着いた刃
この時代には不釣り合いな刃……
「………っ」
濡れるのを気にもせず、
黒い空を見上げて"言の葉"を放つ。
「……なぁ神様、もし本当にいるんなら頼む
私はもうどーなったっていい。
だからあの二人をっどうか………導いてっ…」
そう言って彼女は目を閉じた。
(……あの人が言ってた事が本当なら、
叶う、はずだろ?………)
彼女の頬についた緋を流したのは
雨粒か、それとも、涙か――…
「……を………………。
し………前……………う」
彼女の耳に、雨に混じって何かが聞こえた
「……………っ!?」
思わず瞬時に振り返り、上段に構えた。
刹那、空にはびこる黒いものが
激しく唸り始め、牙をむく。
光るが早いか、
落ちるが早いか、
彼女に知るすべはない。
もうそこに、
彼女はいないのだから…―――。
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