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「なぜ、謝るのですか?」
『御主はもう元の世界には戻れぬ。この時代を生きていかねばならぬ』
そんなことか、
琉生の頭に浮かんだのはただそれだけだった。
それだけのこと、何を気に病む必要があるのか。
感謝こそすれど、桜を憎んだり責めたりする必要がどこにあろうか。
「ーーー私の世界には桜だけでした。あの世界には桜以外何もありません」
狐の桜を抱き上げ立ち上がる。
「その桜がこの時代に一緒に居るんです。何を悔いることがありますか」
にっこりと、桜に微笑んだ琉生はそれはそれは綺麗で、桜は無意識のうちに鳴いた。
「キューン」と可愛らしく鳴く桜を琉生は無言で優しく撫でる。
「桜は唯一の私の味方です。これからもよろしくお願いしますね」
『当然じゃ』
そう呟いた桜の声が泣きそうだったのは気のせいだろう。
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