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るぅちゃん、るぅちゃん・・・と自分を呼ぶ声だろうか。
女の子の、可愛らしい声が聞こえた。
(桜・・・桜が呼んでる・・・)
ゆっくりと浮上して行く意識の中、如月琉生はゆっくりと目を開けた。
「あ!るぅちゃんやっと起きたぁ」
琉生の顔を覗き込み花のように笑う彼女は間宮桜(まみやさくら)。
琉生の唯一の友人であった。
明るく優しくふわふわしていて誰よりも女の子の彼女は男子からは勿論、女子からも好かれている正にクラスの人気者。
クラスで浮いている存在の琉生にとって正反対の存在。
それでも桜と仲が良いのは誰の目から見ても不思議な事だったりする。
「・・・桜」
「もうお昼休みだよ?お弁当食べよー?」
にっこりとお弁当が入った袋を目の前でゆらゆらさせると琉生の前の席に座った桜。
彼女は毎日琉生の分のお弁当までも作ってきてくれる。
それをたくさんの視線を感じながらも平らげるのもいつものこと。
料理上手な桜のお弁当を毎日食べられる琉生を羨ましがる生徒は決して少なくないのだ。
この日も女の子らしい可愛いお弁当を平らげた琉生はいつものように一冊の本を取り出す。
「あ、斉藤さん?」
「ん」
「そっかぁ、るぅちゃん大好きだもんね」
少し拗ねたように笑う桜に思わず笑みが零れる。
「嫉妬?」
「そうだよぉ。るぅちゃんは桜と仲良しなんだもん」
桜が言うと可愛く感じなるその言葉。
琉生は優しく桜の頭を撫でた。
「歴史の人物です。現実に隣に居る桜の方が大事に決まってますよ」
ぱぁっと目に見えて顔を輝かせた桜を更に愛しく思いながら手を離し、本を開く。
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