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斉藤一。
それは彼の幕府の時代を生きた歴史上の人物であり、もう存在しない人物。
教科書にこそ詳しく書かれないが知る人ぞ知る『新撰組』(しんせんぐみ)。
その三番隊隊長が斉藤一という人だった。
有名どころの『沖田総司』や『土方歳三』に隠れはするものの剣の腕はあの沖田総司と争うほどだったと言われている。
琉生がその存在を知ったのは物心ついたとき、父が斉藤一を妄信していたのに原因がある。父から毎日のように聞かされる『斉藤一』という人物に興味を惹かれ、自分でももっと知りたいと思うようになった。
父の薦めで始めた剣道も斉藤一に近づきたいが為に極めた。
左利きの斉藤一と共に戦うなら右利きの方が良い、だけど斉藤一と同じような左利きもやりたい。
そんな琉生が最後にたどり着いたのは両刀使い。
剣道の戦いでは全国一位という肩書きを貰った。
されどまだ斉藤一には近づかない。
近づけない。
斉藤一は『此処』には居ないから。
「会いたい」
そっと声に出した琉生。
それに答えるのはいつも琉生のそばに居る桜だった。
「会えるよ、るぅちゃんなら」
そう言ってふわりと笑う桜を見ていると本当に会えそうな気がするのだ。
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