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寄りたいとこがある。
そう言って桜に連れてこられたのはある雑木林のトンネルだった。
其処は琉生も初めてくる場所だったが可憐な桜には無縁の場所のように思えた。
「桜・・・ここは?」
「すぐわかるよ」
桜の話し方はいつものようにほわほわしたような話し方では無く、とても静かだ。
「るぅちゃん、桜と一緒に居てくれる?」
「桜・・・?」
「るぅちゃんの願いを叶えてあげる」
「願い?」
「るぅちゃんは桜の事好き?」
次々と質問を重ねる桜に好きです、と戸惑いながらもはっきりと答える。
そんな琉生に安心したように笑う桜は「桜も好き」といつもの笑顔を見せた。
「桜、さっきから何を」
「さ、行こ。すぐに分かるから」
琉生の問いを遮るように手を引っ張ってトンネルの仲え足を踏み入れる桜。
琉生は突然の事にただ呆然と引っ張られる事しか出来なかった。
「連れて行って」
「ーーーっ」
桜の鈴のような声が聞こえたと思えば視界は眩い光に遮られ、桜の暖かな手の感触だけが残る。
声を出す暇もなく琉生の意識は飲まれた。
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