13年後のクレヨンしんちゃん

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しんちゃん、泣いてるの? ねえ、泣かないで。 「でも、ホントにお馬鹿なのは……オラだ。」 しんちゃんなかないで。 「オラっ……シロがこんなになってるの、気付かなくて…!! ずっと、一緒にいたのに…親友だって……思ってたのに、なのに!!!」 なかないで、もういいから。 「シロっ…………。」 しんちゃんが泣いている。僕はなにもできない。 せめて元気なところを見せようと思って、僕はしんちゃんのほっぺたをなめた。 しんちゃんのほっぺたは、少しだけ早い春の味。 僕がメスだったら、しんちゃんのために子供を作っただろう。 僕が居なくなっても、寂しくないように。 僕がわたあめだったら、しんちゃんのためにせいいっぱい甘くなっただろう。 僕が食べられても、甘さが少しでも長く口にのこるように。 僕が人間の手を持っていたら、しんちゃんを抱きしめただろう。 僕がしんちゃんにもらった、温もりを返すために。 僕が人間の言葉をしゃべれたら。 きっと、いっぱいいっぱいのありがとうとだいすきを、君に。 ひっきりなしにこぼれるナミダをなめながら、僕はあることに気が付いた。 僕はここを、今しんちゃんがすわりこんでいるここを、知っている。
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