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本当に嬉しい言葉は……、
もっと別の……。
「……」
それは何だ?と聞かれても分からないけど、完全寮生活を余儀無くされる事の重大さを知らない新入生からすれば、「おめでとう」と言う言葉はどんなふうに聞こえるのだろう。そんでもって、そいつらが人生に関わる挫折を味わった時、おめでとうと言った俺をどんなふうに見えるのだろう。
「ご入学……、おめでとうございます」
いざ、口に出してみればそれは残酷な言葉のように思えた。
「あっ、時間だ」
この言葉を本当に気持ちを込めて言えたら、そいつらが挫折をした時に気のきいた言葉をかけてあげられそうで、
「愛美、時間だぞ」
それができて始めて自分の言葉の責任を果たしたと言えるのなら、この先、俺が愛美の傍に居てやれなくても、こいつが抱える苦しみから守ってやれそうな気がするのに。
「起きろって、30分経ったぞ」
安易に踏み込んでいいはずもなく、
「ん……分かった……」
自己嫌悪に陥る事もある訳で、そんな俺の気も知らずに腑抜けた返事をする愛美はまだ夢心地。しかし、これ以上ここにいては間に合わない。
「勘弁しろよな」
俺は原稿を持ち、愛美を横抱き生徒会室を後にした。
「会長!!校長がお呼びです。愛美さんは寝ていらっしゃるのですか?」
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