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一歩引き一礼。今まで口にしてきた言葉のどれをとっても心を込めて言えてはいない。そんな仕事に送られたお世辞にもならない拍手を受けながら小さな階段を伝いながら何となく視線を反らせ、新入生を見た。
その時―――
目が合った君は俺に笑いかけてくれた。
今まで氷っていた大地に風が吹き渡り、俺の心にも春の訪れをもたらした。
ずっと胸がドキドキしている。今までにはない感覚で戸惑いもした。
自分の席についた後も君が居るであろう方向に何度も視線を移す。まだ沢山の話を聞き、後で挨拶した時に気の訊いたことを言わなくてはいけないのに、全く言葉が入ってこない。
これが一目惚れだと気づくまでには然程時間は必要なく、次の日から俺は見回りと言う名の君探しを始めた。
「ったく誰だよ、新入生の席順を適当にした奴……」
それこそクラス順の出席番号順にしてくれていれば探しやすかったものを。
俺は呆れながら生徒会室でのやり取りを思い出していた。
(新入生の席はどないする?順に座って変に格差ができたら嫌なんよね、後々もめられてもめんどくさいし)
愛美はパソコンとにらめっこをしながら他の役員に問う。
(適当でいいんじゃねぇ?)
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