652人が本棚に入れています
本棚に追加
「失礼しま~す。」
「おや?秋月か。めずらしい・・・・訳じゃないな。」
先生は、悠真に抱えられている僕を見て少し渋い顔をした。
「んー・・・・ちょっとね。ベッド借ります。」
僕は、ベッドに座りホッと一息ついた。
「おっ、来たぞ。」
先生の言葉と共に聞こえてきたのは廊下を走る音。
そして・・・・
「渚っ!!」
ドアの開く音と共に聞こえたのは諒の声だった。
諒は僕を見るなり、痛いくらいにぎゅうっと抱き着いてきた。
「・・・・・・」
悠真の腕も落ち着けたけど、諒の腕は本当に安心できる。
震えがスッと消えていくのが分かった。
(あっ、デジャヴュ・・・・)
「ふふっ。」
前にもこんな事があったなぁなんて思い出して、ちょっと笑ってしまった。
「渚?」
諒が不思議そうな顔で僕を見ている。
「ありがと、諒。もう大丈夫。」
「・・・・うん。」
でも、諒は僕から離れようとしない。
「ほれ、茶でも飲め。」
そんな僕たちを見兼ねて、先生が声を掛けてくれた。
「それと、さっきから秋月が何か言いたそうにしておるが?」
先生の言葉に、諒がピクッと反応した。
「先生、渚と話していてもらえますか?」
「おぉ、良いぞ。」
「渚、ちょっと待っててな。」
諒は僕の頭を撫でてから悠真の所に行った。
「・・・・僕が・・・・」
「そう言う・・・・」
2人は小さい声で話しているけれど、時々声が聞こえてくる。
「・・・・ッ!?」
不意に聞こえた『プール』と言う言葉に、再び身体が震え出す。
「相沢?どうした?」
先生の声に気付いた2人が、僕の所に駆け寄ってくる。
「渚っ!?」
「渚くん?」
「あっ・・・・僕・・・・」
今はっきりと、あの時のもう1つが何なのか分かった。
背筋が凍るような怖いと言う感情だったんだ・・・・
最初のコメントを投稿しよう!