1・僕と朝

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隣を歩く諒を見上げる。 165センチの僕に対して、諒は180センチ。 子どもの頃は僕の方が大きかったのになぁ・・・・なんて思いながら、ふと昔を思い出す。 僕が5歳の時に隣に引っ越してきたのが佐々木親子だった。 同じ歳だった僕と諒は、すぐに仲良くなった。 あの頃は、どこに行くにも何をするにも、諒は僕の後ろについて来ていた。 それが、10年経った今じゃ・・・・ 「どうした?」 諒が僕の視線に気付き、頭を撫でる。 「何でもない・・・・」 諒はニッコリと笑い、しばらく頭を撫でてから、その手でそっと頬を撫でる。 「・・・・・・」 まるで子ども扱いだ。 (いつからだったかな、こんなに過度なスキンシップをするようになったの・・・・) お弁当や朝ご飯を作るようになったのは中学に入ってから。 だけど僕以外はみんな朝が弱く、小さい頃からみんなを起こす事が僕の日課になっていた。 その度に、母さん達にはキスされて、諒にはぎゅうってされて・・・・ 初めはどうしようかと思っていたけれど、慣れって怖いな。 毎日されているとそれが当たり前のように思えてしまう。 それを嫌だと思わない自分がいるのも事実だけど。 「諒、おはよー。」 「おはよう。諒くん。」 学校へ近付くにつれ、周りに学生が増えていく。 それと同時に、諒に対する挨拶も増えていく。 僕と諒は正反対だと思う。 暗く静かな僕と明るく元気な諒。 1度、一緒に登下校するのをやめようと言った事があった。 諒と一緒にいる時はないけれど、1人になると陰口を叩かれる。 僕の方を見てコソコソと。 僕は、そんな事で落ち込む程やわな人間ではないと思う。 だけど、諒みたいな人が僕みたいなのと一緒にいる意味はないと思ったから。 幼なじみと言うだけ。 でも諒は、僕と一緒にいるって言った。 理由は言わなかったけど、『俺が良いって言ってるから良いの。』って笑ってた。
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