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震えの止まらない僕の身体を、諒が押さえるように抱きしめてくれる。
僕は、諒に抱きしめられたまま、あの時の事を話し始めた。
「・・・・ムカつく・・・・」
「悠真?」
「秋月、黒いの出てるぞ。」
「あっ、ゴメンね。」
一瞬、悠真が別人のように見えた気がした。
そして、諒と悠真が2人だけで分かるような会話をしたのを見て、胸がチクッと痛むのを感じた。
「・・・・・・」
そんな僕に気付いた悠真が、恐る恐る僕の手を握る。
「あのね・・・・もう少し・・・・もう少し待って・・・・必ず話すから・・・・」
悠真の手は震えている。
きっと、何かあるんだろう。
「ん。分かった。」
僕はそう言って、悠真の手を握り返した。
「・・・・ありがとう。」
ニッコリと笑う悠真は、やっぱり可愛らしかった。
「秋月・・・・」
「分かってる。じゃあ、僕は修ちゃんの所に行ってくるね。もう、渚くんに怖い思いはさせない。」
「・・・・・・」
保健室を出ていく悠真の背中を見つめる。
悠真が修平くんの所に行ったら、僕が怖い思いをしなくて済む・・・・みたいだ。
だけど、どうして・・・・
「秋月も石神も、渚が大切だから・・・・渚の為に行動してくれるんだよ。」
「諒・・・・」
僕の疑問に答えてくれたのは諒だった。
「僕、何も言ってないよ?」
「顔に書いてあったから。」
「へっ?」
ペタペタと自分の顔を触る。
「確かに、相沢は分かりやすいからなぁ。」
「むぅ~・・・・」
先生にまでそう言われる始末。
「あの2人は、お前さんの事を兄弟のように思っているんだろ。」
先生にしみじみと言われて、すごく嬉しかった。
「誰にだって、人に言えない事の1つや2つ、あるだろ。でも、そんなのは関係ないよ。渚は、あの2人を信じていれば良いんだ。」
「うん。」
怖い事もあったけど、それ以上に嬉しいと思える事があった1日だった。
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