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3日後に迫った文化祭。
準備も着々と進み、学校全体がお祭りムード一色になっている。
そんな中、僕は家庭科室の黒板の前に立っていた。
目の前には、僕に視線を向けるクラスメイトが・・・・
調理担当になって浮かれていた僕に、大きな落とし穴が待っていたんだ。
裏方で、ヒッソリと料理を作っていれば良いと思っていたのだけれど、僕が1番上手いと言う事が判明して、みんなに教える事になってしまった。
今日は、実際に出すメニューを試作して試食する。
前の調理台で、悠真と修平くんに手伝ってもらいながら、説明していく。
緊張のせいで手が震えそうになるけれど、料理に集中してどうにか進める。
「あの・・・・相沢くん・・・・」
「ふぇっ?」
突然話し掛けられて、変な声が出てしまった。
「これ、どうしたら良いの?」
分からない所を僕に聞きたかったようだ。
「えっと・・・・これは・・・・」
その1人を皮切りに、次々と質問をされる。
話す事は苦手だけれど、調理の説明はスムーズに出来た自分に少しビックリしてみたり・・・・
いつの間にか、僕を囲むように人の輪ができていた。
(・・・・誰かと料理するって楽しいかも。)
そんな事を思い、悠真と修平くんの方を見ると、2人とも嬉しそうにニッコリ笑っていた。
× × ×
「ふぅ・・・・疲れた・・・・」
片付けを終えて、僕は調理台に伏せた。
「ふふっ。お疲れ様。今日はいっぱい喋ってたね。」
悠真が僕の頭を撫でてくれる。
「ん~・・・・大丈夫だったかな、あんなに喋っちゃって・・・・」
クラスメイトの反応が気になったけど、怖くて見る事ができなかった。
「問題ないよ。」
「あぁ。大丈夫だ。」
悠真と修平くんの言葉に、ホッと息を吐く。
「料理、やっぱり楽しいなぁ。諒がいてくれたら、もっと楽しく出来たのかな・・・・」
無意識に諒の事を考えていたと言う事に、その時の僕はまだ気が付いていなかった・・・・
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