6・僕と文化祭

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僕は今、独り淋しくクレープを食べている。 校内を色々と回っていた時に、諒が女の子に連れていかれてしまったんだ。 僕から少し離れた所で話しをしている。 ここからじゃ、何を話しているのか聞こえないけど、すごく楽しそう。 諒は、話しに夢中になっている。 「・・・・・・」 クレープも食べ終わってしまい、少し考えた末、僕は諒にメールをして教室に戻る事にした。 あんな諒を見ていたくなかったから・・・・   ×    ×    × 「あれ、渚くん?どうしたの?」 教室に戻ると、悠真が出迎えてくれた。 「ん~・・・・ちょっと・・・・」 「そっか。奥、誰もいないよ。」 悠真が何も聞かないでくれた事がすごく嬉しかった。 調理台の横に作られた小さな休憩スペース。 2つ並べられた椅子の上に横になった。 (どうしてこんな事に・・・・) 高校生活初めての文化祭。 最初は憂鬱だと思っていたけど、クラスのみんなに話し掛けてもらえる事が少しずつ増えていって、準備が楽しくなって・・・・。 今まで、学校行事の当日の朝は、いつも『行きたくない』って思ってた。 だけど、今朝初めて『行きたいな』って少し思えた。 そんな始まりの今日だったのに、諒がいないと言うだけでこんなに淋しくなるなんて・・・・ 「ふぇっ・・・・」 淋しいと言う気持ちを自覚した途端、涙が溢れてきてしまった。 「渚くん!?」 僕の声に気付いた悠真が、駆け寄って来る。 「ぅ~・・・・ど・・・・しよ・・・・ック・・・・止まんな・・・・」 悠真は何も言わずに抱きしめてくれた。 「渚くん、今日はもう帰ろ。」 「でも・・・・」 「大丈夫。その代わり、明日は一緒に頑張ろうね。」 「・・・・うん。ありがと、悠真。」 修平くんが、渡辺先生を呼んできてくれて先生が車で家まで送ってくれた。 諒から何回も電話が掛かってきていたけれど、出れなかった。 そして翌朝、僕は諒を起こしに行く事が出来なかったんだ・・・・
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