6・僕と文化祭

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「ん・・・・」 ベッドの軋む音と、身体にかかる重みで僕は目を覚ました。 「・・・・諒?」 意識がハッキリしてきて、諒が僕に覆いかぶさっているのだと気付く。 「渚・・・・」 諒は僕にしがみつき、うわごとの様に僕の名前を呼んでいる。 耳元で聞こえる諒の声に嗚咽が混じっている事に気付いて・・・・ 「僕ね、諒がいなくて淋しかったんだ。」 両腕を諒の背中に回して、力いっぱい抱きしめて、自分の気持ちを正直に話した。 「渚・・・・俺もだよ。」 諒は、少しだけ離れて僕の顔を覗き込んだ。 その目は真っ赤になっていて、何だか諒が可愛く思えた。 「諒・・・・」 僕は、諒の頬に手を伸ばす。 諒は嬉しそうに目を細め、僕の手の上に自分の手を重ねた。 「どうしてここにいるの?」 「先生に鍵借りた。ここにいるのは分かってたから。」 「そっか。諒は何でもお見通しなんだね。」 「・・・・そんな事ないよ。」 「そうなの?」 「渚の気持ちは、渚にしか分からない。」 「僕の気持ち・・・・」 「そう。俺には分からない。」 「ん~・・・・僕にも分からない・・・・かな。」 「えっ?」 「うぅん、何でもない。」 僕自身、自分の気持ちなんて分かっていない。 どう言う感情がどう言う気持ちなのかとか、どんな時にどんな気持ちになるのかとか。 ただ、諒がいないと淋しいと思ったのは事実で・・・・ 2人で並んでベッドに座り、窓から見えるキャンプファイアを眺める。 「来年はさ・・・・」 諒がポツリと呟く。 「ん?」 「来年はちゃんと楽しも。文化祭だけじゃなくて、もっと色々。楽しい事はまだまだあるから。」 「うん。」 「それと、明日からはまた起こしに来てくれるよね。」 「ん、分かってるよ。」 いつの間にか僕たちには笑顔が戻っていた。
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