2・僕と教室

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はっきりと自覚したのは、小学校5年生の時。 僕は人と話す事が苦手なようだった。 いつも諒と一緒にいたから気付かなかったけれど、5年生の時にクラスが離れて初めて気が付いた。 でも、元々読書が好きだった僕には、問題ないように思えた。 そう思っていたのだけれど・・・・ 子どもは残酷だった。 自分達と違うものは徹底的に差別し、排除しようとする。 僕はイジメの対象になってしまった。 父親がいないと言う事も、その原因になっていた。 僕と諒にとって、そんな事は当たり前の事だったのに。 教科書を隠されたり、とことん無視されたり。 そんな時、僕を助けてくれたのは諒だった。 諒のおかげで、僕に対するイジメはなくなった。 だけど、僕は益々人と話せなくなり、読書と勉強にのめり込んでしまった。 その後も僕の状況が変わる事はなく・・・・ 初めて会う人間が増えるたびに、陰口を叩かれる。 でも、僕には諒がいた。 諒には本当に感謝している。 面と向かっては言えないけど。 「ねぇ、渚くん?」 物思いに耽っていたら、後ろから悠真に制服を引っ張られた。 (そう言えば、悠真と修平くんは最初から普通に接してくれたな・・・・) 「なぁに?」 「今日もお弁当半分コしよ?」 悠真は、僕のお弁当を気に入ってくれていて、いつも自分のお弁当と交換してほしいと言う。 「うん。良いよ。」 「やった!!」 ニコッと笑って小さくガッツポーズをする悠真。 そんな悠真が何だか可愛くて、気付けば頭を撫でていた。 「・・・・渚くん?」 「あっ、ごめんね。つい・・・・」 「もぉ。」 こんなくだらないやり取りをしていると、僕もこの教室にいても良いんだって思える。 授業中はまだ良いけれど、こう言う少しの開いた時間に1人になると、ちょっと辛いから。
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