始まり

2/8
前へ
/9ページ
次へ
「や…だよ」 目から零れ落ちる涙。 顔がぐしゃぐしゃになることも 近くに医者や看護婦がいることも気にしないで 私はただ泣き叫んだ。 「ぃやだよ… お母さん」 私の目の前には…病院のベッドで静かに眠るお母さん。 私の声に気づいたのか、お母さんは静かに目をあけた。 そして、ゆっくりと視線を私の方に向ける。 苦しそうに、荒い呼吸をしながら でも、その目はしっかりと私をとらえていた。 「えみ、ご…めん」 喋るのなんて辛いはずなのに、お母さんは懸命に口を動かす。 「リビングの棚…ッ上から2番目の引き出し…」 苦しそうに呼吸を乱しながら、必死に何かを伝えようとする。 リビングの棚の、2段目の引き出し。 そこに、お母さんは大事な物をよく入れていた。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加