Episode 1 『リリィの記憶』

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カチッ,,,,ウイィ──── リリィがホバートラックの三号車のキーを回すと,エンジンが静かに回り始めた。 「ほかに何か必要な物ってある?」 運転席で買い出しのリストをぱらぱらと捲りながら,ハイドリッヒに訪ねる。 「う~ん,そろそろ寒くなってくるだろうから新しい防寒具と,インスタントのスープはもう少しあっても良いかもしれないな。余裕があったらでいいけどね」 運転席へのステップを二段ほど上がり,乗降用の手すりに体重を預けながらリリィが持つリストを覗き込んでさっとアドバイスを加えると,彼はステップを飛び降り,運転席のドアをバンと閉めた。 「じゃあいってらっしゃい。」 「うん,行ってきます。」 「気をつけて。」
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