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そして80億人にまで膨れ上がっていた世界総人口は,再び50億人程度まで落ち込んだ。
もちろんリリィにとっては歴史の教科書でしか見たことのない出来事であり,彼女の両親ですら,そのまた両親から昔の惨状として聞かされていた程度の知識しか持っていなかった。
その復興の産物といえるのが世界連邦であり,VHASであった。
初代連邦政府首相のロナウド・ウィリアムスは,就任演説でこのような事を述べていたそうだ。
「小惑星群の衝突という未曽有の大災害で,世界では約30億の尊い命が失われました。
ニューヨークは地上3mが海に沈み,日本や中国では沿岸部,山間部に壊滅的なダメージを受けました。
ですがいつまでも下を向いてはいられません。
生き残った我々は,この世界を維持しなくてはならないからです。
そのためには世界の秩序,自然を擁護する事が必要不可欠であり,時に我々は従わない者を力でねじ伏せるかもしれません。
ですが再び世界をひとつにまとめるには,無慈悲なほどの尊厳が必要なのです。
そして皆さんにとっても,人が人を律するために我々の助けが必要になると確信しています。
今こそ全人類が力を合わせる時です。
新しく明るい未来を,我々の手で切り開きましょう。」
これが今の世にも残る,世界連邦発足の瞬間であり,長きに渡る戦いの幕開けであった。
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