Episode 1 『リリィの記憶』

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「君は軍人,,,ではないね。 銃の扱い方から見れば,その手のことに関係のある人間で間違いはないだろうけど。」 「軍人でも,それ以外でもない,あなたと同じただの人間よ。」 自己紹介代わりの他愛ない話しをしながら,老婆が用意した荷物をトラックに積み込む二人。 最初は口数の少なかったリリィも,だんだんと話しをするようになってきた。 「あなた,アレックス・クロース大尉じゃなくて?」 「さぁ?私はアレックス・クロースでも,それ以外でもない,ただのアレックスだよ。」 「はぐらかして,意気地のない人ね。」 「生まれつきさ。父親に似たんだ。」 「じゃあひとつだけ答えて。」 荷物を積み終え,幌を被せてロープで縛り上げると,彼女は荷台越しに問い掛けた。 「もし戦場で私のような人間があなたに銃口を向けて立っていたら,あなたは撃つ?」 「,,,撃つさ。敵は撃てる時に撃つ。そのとき撃たなかった敵が,自分の仲間を,自分自身を撃つかもしれないからね。」 そう言った彼の目は,自分や仲間の生き死には自分で決めるという軍人の目であった。
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