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西暦2213年,フランス某所 旧市街
ピピピッ!!!!
…━ピピピッ!!!!
今日もこの夢から始まるのか,そう中場諦めながらやかましく鳴り続ける目覚ましを止める。
枕元に置いてあるシルバーのタグを手にし,首にかける。
“Lily=L=Kusanagi”
カーテンの隙間から漏れ入る朝日にタグが輝き,壁に降りる影に光の幾何学模様が浮かぶ。
ここは旧EUが治めていた地区,今はもう機能などしていない場所。
旧市街。
父を殺した武力に自らも足を踏み入れてしまった。
『リリィ,お前は俺のようにはなるな。』
夢に見る父の言葉を思い返すたびに,こうなってしまった現実と父の願いとのズレを感じ,罪悪感のような背徳感のような複雑な気持ちに苛まれる。
15年前の特殊部隊による襲撃事件は翌朝には世界中に知れ渡り,世界中でくすぶっていた反連邦組織に立ち上がる気すら起こさせなかった。
そういう点では作戦は成功していたわけだし,結果的に治安も良くなったのだと思う。
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