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自分の靴を履き、玄関脇に置いてあった赤い色のランドセルを背負う。
「行ってきます」
駆けまわる兄には到底聞こえないであろう小さな声で、言った。
「おうっ!いってらっしゃいっ!!」
なんと聞こえたようであった。
麗は、誰も見当たらない廊下の方へ顔を向けると、ちょっとだけ笑い、玄関ドアのほうへと向きなおった。
ガラガラガラ・・・ピシャ
「んがんがんが!…ングッ!」
男は適当に制服を着ると、座布団に腰も下ろさずに中腰の状態で自分で用意した朝食を食べきった。
しかし、味噌汁は注がれていなく、それ用のお椀は脇に伏せられたままだ。
「ぅああああ!ヤッベェよもう!」
食べきると一目散に廊下を走って行って、
ジャバババババババ!
ガシガシガシガシガシ!
ガラガラガラガラガラ!
バシャアッ!
蛇口からの水が出る音と、歯を磨く音が終わると、
ドタタタタタタ!
またすぐに廊下から男が戻ってきた。
「あ、ヤベ、鞄!……と、生徒手帳!!」
また廊下へと走ると、出たところのすぐ目の前の扉を蹴り開けて入った。
そして、学習机の脇に落ちている鞄を取り、机の上に置いてある生徒手帳を手に取った。
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