プロローグ 春ですね

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 「うおおおおおおおお!」  ボタンを締めていない制服の上着を風になびかせながら、右脇には鞄を抱え、左手と両足を思いきり振りながら全力疾走をしている。  カラカラカラカラカラ…  ふと、後ろの方から自転車の、車輪が軽快に走る音が聞こえてきた。  必死に走る柾には、もちろん全然耳に入っていない。  シャァーーーーー  その自転車はそのまま走る柾を悠々と抜き去って行った。  自転車の主は柾とは打って変わって、髪はしっかりと整えられ、制服も着こなし、ネクタイも締めている。  (走ってるなぁ。まぁ、ここから福寄高校まで歩きだと結構時間かかるからな)  空木だった。  走る柾を横目にチラッと見て、さっさと自転車を漕いで行った…―
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