第一話 お近づきになりたいのだが

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 シャツの皺が寄ってしまうことなど全然気にも止めず、裾をズボンに押し入れ、赤い色のネクタイを鞄から取り出し、首にかけたところで、俺は口を開いた。  「あ、あのぉ」  今度はこっちからおずおずと尋ねる。  「これは、どういう…?」  あっ、と気づいて、女の子は解答してくれた。  「あ、ぇと、これです。……風紀委員!」  自分の左腕にクリップで止められている腕章をつまんで見せてきた。  『風紀委員』    そこには黄色地に黒いゴシック体で書かれていた。なんだか危険な場所を知らせるあのマークと同じ色合いのせいか、不安な気持ちにさせられる。  あぁ~、と、俺は口を丸くして納得した。    まったく、何という不運か。遅刻ギリギリで登校しておいて、校門で服装チェックとは…。  心の中でため息をつきながら、自分の首元を見る。  「あ、あれ?確かこうだったような…。んん、結べない…」  慣れないネクタイ締めに手間取っている時だった。  「ぁ」  すぅっ……  と、不意に俺の首元に、色白の、小さく細い手が延びてきた。
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