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普通の一軒家が立ち並ぶ住宅地。
その中に、他の家と比べて少し、よく言えば和風な、悪く言えば古い感じの、一階建の一軒家があった。
ジリリリリリリリリリリリリ!!
その家の一室、耳を裂くような鐘を叩く音が、陽が昇って間もない、薄明るく、静かな空に響く。
「もう、分かったから、し~~~ず~~~ま~~~・・・」
その言葉と共に、目覚まし時計から一番近い位置で眠っていたひとりの男が、掛け布団から手をゆっくり伸ばした。
「れいっ!!」
バシッ
と、なかば叩くように時計の頭のスイッチを手のひらで抑える。
男は起き上がらずに時計を見やすいように傾けると、眠たそうな目で針を見た。
短い針は6を、長い針は12を指していた。
「6時・・・」
一度ゆっくりまばたきをすると、眉根を寄せて、ムクリと上体だけを起こした。
横を見ると女の子が一人、横になっていた。
「ん~・・・もう朝?」
その子はまだ眠そうに目をほんの少しだけ開き、自分の掛け布団をギュッと掴んだ。
男はその子の頭を軽くなでる。
「まだ6時だ。お前はもう少し寝てな」
小さく優しい声で言うと、
「ん…」
女の子はまた気持ちよさそうに眠りについた。
ふぅ、と小さく息をつくと立ち上がって、腕を低い天井に向かって高く伸ばした。
「んん~…よし!朝飯作っか」
男は部屋のドアを静かに開き、その場を後にした…―
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