第一話 お近づきになりたいのだが

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 若干息を切らしているその子を見て最初に目に入ったのは、長い、橙色に近い髪の毛を後頭部の高い位置で結っているポニーテールだった。  結われた髪が横に大きく揺れた。  「アンタ今、ふうちゃんにネクタイ締めてもらわれてたでしょ!」  両手を自分の腰に当てて俺を睨み付けてきた。  「え、いやぁ、あの、俺、は……」  「問答無用っ!こんの不良がぁぁぁぁぁ!!」  (また遮られたっっ!)  その子は言い放ちながらその場で急に回ったかと思うと、  ぐわぁっ!  彼女の右足による後ろ回し蹴りが繰り出されてきたっ!  ドシィッ!!……バタン…  脇に抱えていた鞄が落ちた。  「ちょっエミちゃん!いきなりはダメだって言ったでしょー!」  すでに自分の顔を両手で覆い隠しながら、エミちゃんと呼ぶポニーテールの女の子(以下、エミちゃん(仮名))に呼びかけた。  楓希さんは、おそるおそるその手を下に下げ、目の前の光景を目にした瞬間、ポカンと口を開けて、一瞬停止した。  「うわっ…」  いきなり蹴り込まれた足を、俺は鞄を抱えていた方の右腕で咄嗟にガードしていた。  「んなっ!」  受け止められた自分の脚と、俺の顔を見て驚くエミちゃん。  バッ!  エミちゃんとやらは足を引いて構え直した。  「…アタシの不意打ち回し蹴りを止めるとは…アンタ、ただの不良じゃないみたいね!」  またキッと睨み付けられた。
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