第一話 お近づきになりたいのだが

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 その後、数秒してから教室内の生徒たちの半数以上が席を立ち、それぞれの中学校の友達と思しき人がいる席へと移動しだした。  そして、さっき教師が指を指した方向の生徒たちも、ひとりを残して、全員が席を立ち、そして違うひとりがやって来た。  「ぃよーっ柾ぃ!まさか高校一年目でいきなり同じクラスとはなぁ!また俺達の『同じクラス』記録が更新されちまったようだなぁ」  ダハハハと少年はひとり残った少年イコール俺に元気よく声をかけてきた。  「んあ…あれ?柾くーん?マッサキちゃーん??」  返事がなく、三度呼びかけても俺からの答えはない。  窓から一番近い列の、一番後ろの席で、頬杖をついてずっと窓の外を眺めている。  「なぁ、まさ……」  四度目の呼びかけを行おうとしたとき、  「俺さぁ」  俺はようやく応える気になって話し出した。  当然少年が話しかけてきていたことには気づいていた。  つまり、あえて無視していたのだ。…いや、なんとなく。
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