第一話 お近づきになりたいのだが

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 「お前の口から『恋した』なんて言葉が聞けるとは思わなかったわ。しかも高校の登校初日に」  俺はそこで初めて頬杖から顎を離し、少年の方を向いた。  「あれ?拓馬(タクマ)、あんまし驚かねぇのな」  「これでも少しは驚いてるんだけどな。まぁ、お前とは付き合いメチャクチャ長いけどよ、俺の知る限りお前が恋したことなんてないだろ?ホントなのかよ、と思ってよ~」  「ん~…」  そう言われて、俺は少し考え出した。  「今までと明らかに違ってさ、もう一目見た瞬間に心臓ドキドキーの、顔熱くなりーの……」  「嫁ぎーの、か」  「…もう古いだろソレ」  古いギャグを飛ばされてしらける俺。きっとそんな顔をしていただろう。これが筆者の近くで流行っていたのは何年前なのか…皆目見当がつかない。……俺に何を言わせるんだ。  そして反対に拓馬は少し恥ずかしそうな表情に。 「今のってフリじゃなかったのかよ…」  そしていかにもガッカリしたように首をうなだれた。
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