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―…その頃、その家から大分離れた、これまた住宅地に、洋式の、というか、現在の日本では普通の二階建ての一軒家があった。
庭は車庫の後ろに数平方メートルあり、その庭に隣接して黒い玄関口がある。
ガチャ…
不意にドアが開いた。
中からは少し長めの、しかし綺麗に整えられた黒い髪の少年が出てきた。
大人びているが、どこかまだ幼い感じがするのは、背が少々低いからだろう。
その少年は玄関の脇に設置してあるポストの裏の蓋を開け、中から新聞を取り出した。
「……」
そして無言で、まだ水平線上にあるであろう朝陽の方向を見上げながら空に向かって高く腕を伸ばした。
「ふぅっ…はあ。今日は晴れかな。やっぱり初日はこうでないと」
そう呟き、振り返って玄関のドアを開け、また中へと入る。
靴を脱ぎ、リビングへ入ると、食卓の上に取ったばかりの新聞を読まずに置いた。
「よし、これで朝の仕事は終わり、と」
腰に両手を当てて、満足そうに、置いた新聞を見る。
「よし、行くか」
そう言うと、すぐにまた玄関へ向かい、靴、というかシューズを履いた。
少年はすでにウインドブレーカーを着ている。
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