プロローグ 春ですね

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 ―…「おにいちゃん」  「んぁ…」  幼い女の子は寝ている男の体を掛け布団越しから揺すっている。  「お兄ちゃん。私もう学校行っちゃうよ?」  淡々とした口調で男に声をかける。  小さめの声に、それで本当に起きるのか疑える。  が、  「ん~…」  お兄ちゃんと呼ばれた男は怪訝そうな顔をしながら、頭を掻いて上体を起こした。  「麗(ウララ)か…今日は学校行くの早いんだなぁ、始業式だからかぁ?」  問いかけると、返事を待たずに枕元の目覚まし時計を掴む。  「…。お兄ちゃん。もう…」  「あ”」  目覚まし時計を見た瞬間、男の目が大きく見開かれた。    「8時だよ?」  「マジかよっ!しまったぁぁはぁぁっ!!」  麗の声の最後がかき消されるように大声で叫びながら、勢いよく立ち上がった。
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