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「あぁ、その人ね……」
案外あっさりと教えてくれた。
「毎週月曜の昼に現れて、夕方にその……『月の神話』?って本を借りてくんだよ。
で、火曜日の正午きっちりに返しに来る」
「どんな感じの人なんですか?」
「四十歳位でヨレヨレのコートなんか着ちゃって、無精髭は生えてるし髪もチリチリで肩まで伸びちゃってるしさ。
一体どんな仕事してるんだろうね」
眼鏡を掛け、七三きっちりに分けた髪、スーツをしつかり着込んだ初老の受付は、きっとこのノリスケという人物が性に合わないのだろうと月王は思った。
「毎回その本しか借りないしさ。
まぁ、その本人気ないからいいんだけどね」
「ありがとうございました」
風貌も分かったし、現れる時間も把握出来たので早々にこの場を立ち去ろうとすると、
「あんたらあの人の知り合い?
たまには違う本も借りて人生の見直しをするよう……」
他人の説教を聞く前に二人は逃げ帰った。
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