とあるお医者さんのお話

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「ワグナーさん…貴方もお顔色が宜しくないようですが…」 心底疲れたようなその医者…ワグナーに、サジは気遣いの目を向ける。だが 「あ~うんそうだね僕は馬鹿じゃないからね!風邪くらいひくよね!!あーどうしようもう働けないやー!!」 そんな阿呆のような発言に、前言撤回。 「ああ…気のせいでした」 サジはそう言ってやれやれと立ち上がった。 「お元気そうなので、私はこれで失礼させていただきます」 「あーちょっと嘘嘘!冗談だから帰らないでお願いー!!」 もちろん、すかさずこちらも前言撤回するが 「冗談ですよ」 サジはそう言って穏やかに笑った。ワグナーは冗談を冗談で返された事にやや口元を歪めるが、再び溜め息を吐いてからどかりと椅子に腰を下ろした。 「まあ…真面目な話、サジ君が来てくれなかったら自分もどうなってたことか…ね」 そう口にしながら、眼鏡を外して眉間をぐっと押さえる。どうやら、目に見えて解る疲れは本物だったらしい。 「それだけ、酷い流行り病という事でございますか」 「そうだね…免疫力のない幼児や老人には下手すりゃ命の危険もあるから」 「それで…薬が足りないわけですね?」 「そう、だからサジ君には新薬の調合を頼みたいんだ」そうやって、察しの良いサジに助けられながら用件を述べると、ワグナーは眼鏡をぶらりとグラスチェーンに吊り下げたまま、作業デスクの引き出しを開けた。 「それからもう一つ。緊急事態でね。サジ君には一緒に来てもらいたいところがある」 そして、大切な用件が、もう一つ。 中から取り出したものは純白の封筒。ワグナーはそれをヒラヒラと手元で揺らし、目を細める。 「それは…?」 「秘密の手紙。王宮へ来いって、何と近衛隊長様からのラブレターで~す」 「…!!」 サジが首を傾げたところで、ワグナーははっきりとその手紙を目前へ掲げた。 「王に何か…!?」 「さあね。とりあえず、真面目に働け馬鹿もーんってお説教をくらうわけではなさそうかな」 手紙を受け取り、それが確かに王宮からのものであることを確認すると、サジは深刻な面持ちでそれを見つめた。 「…タイミングがタイミングだからね、王様が新種にやられた可能性は高いかな。会ってからでも遅くはないけど、後に詰まってる患者の事も考えると、薬の用意は早いに越したことはない」 「……承知致しました。すぐに取り掛かりましょう」
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