現実

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「んま、簡単に言うとこんなとこかなっ 折角の機会なんだし、デートくらいしてみたらどーよ?」 きっとその時あたしは不満げな顔をしていたんだと思う だからわざわざ性格いい子だよそいつ、と付け足したのだろう そんな話、不満がないほうがおかしい むしろあるのは不満だけだ とりあえずあたしは現実逃避を図ろうと苺タルトをじっくり味わうことにした それにしてもここのパティシエさんが作るスイーツは最高だ 今日のタルトも無論例外ではない 苺が艶々と輝いていて、ひとつひとつがまるで真紅の宝石 カスタードは絹のように滑らかで口の中に優しく溶けていく ほんと、このひと時は幸せでたまらない 「ちょっと茜、話聞いてるー?」 が、ななの言葉で結局あたしは現実に引き戻された 「・・・ちゃーんと聞いてま「で、どうよ?」 随分と急かすのね、ななさん・・・ 「ん、そうねー」 仕方ないので丁重にお断りするとしよう 「あたしは会ったこともない相手とデートだなんてとんでもないわ 悪いけど、その話パス」 他の子辺りにでもあたってちょーだい、そう一言付け加えてキャラメルマキアートを流し込んだ
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