第零話 伊丹 純

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病院で白衣を羽織りカルテを見ながら患者に同席している母親に気を使って愛想笑いを浮かべている男、つまりは医者。 今、彼の前には一人の少年が椅子に座っている。 「名前は?」 「・・・・・・」 「今日、調子はどう?」 「・・・・・・」 「朝ご飯はしっかり食べた?」 「・・・・・・」 少年は無言。相手を認識さえしてないようで目は開けているのだが視点が定まることはない。 「どうですか調子は?何か変化は有りましたか?」 質問は同席している少年の母親に向けられた。 「ご飯食べてと言ったら、ちゃんと食べてくれますし、掃除しろと言ったら掃除してくれますけど。相変わらず言われたことを実行してるだけで、まるで人形みたいで・・・・・・」 医者は相づちをうってカルテに【改善の兆しなし】と書きこむ。
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