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「でも、生徒が作ったにしては面白かったかも」 「しかし、予算から考えて、これは些か掛けすぎじゃないか?」 次に会計の少年が感想を言って、副会長の少年が訝しげに眼鏡の奥を光らせる。 会計の少年は、ブレザーではなく濃色のカーディガンを羽織っていて、耳や首、その他にも指や手首や見えないが足首に宝石の付いた装飾品をじゃらじゃらと付けていて、目立つ格好をしていた。 だけれど、顔立ちは穏やかで優しい印象を与え、肌は日焼けしたことがないのかというぐらい白い。 炭色の混じった黒い髪は顎に付くくらいの長さだが、その影から腰に届くまで長い髪筋が流れている。瞳の色は黒だ。 副会長の少年は、生真面目さがそのまま現れたような顔立ちをしている。他の三人と比べて制服も規定をきちんと守っている。 緑の髪も襟元までの長さで、前髪も怖ろしいまでに綺麗に七三に分けられている。 フレームの太い眼鏡の奥には、髪と同色の一重の目が輝いている。 「それも良いが、俺、眠いんだけど」 大きく欠伸をする最後の人物は、書記の少年だ。 軽く着崩した制服に、ネクタイの代わりに白虎の毛皮のようなファーを首に巻きつけて、ズボンのベルトの位置も腰よりやや下だ。 象牙色の肌に、黒くて真っ直ぐな黒い髪を頭頂部に近いところで結い上げて、背中に垂らしている。鼻までの長さであろう前髪も、真ん中で分けて適当に流しているようだ。 「まあ、良かったんじゃねえの。規制する程でもねえしさ」 書記の言葉に、数人の部員がほっと胸を撫で下ろす。 だけど・・・と、会長の切り替えしの言葉に、一瞬にして空気に緊張が生まれた。 「何か、つまんないのよねえ・・・」 ぴしゃりと言い放った少女の言葉に、演劇部員の表情に緊張が走る。 おそるおそる部長兼監督の顔を見てみると、笑みを絶やさないでいた。 「どういうことかな?」 「内容はまあいいわ。カメラも良いし、脚本も、強いて言うなら・・・」 かつかつとヒール音を鳴らしながら、他の三人を侍らせてこちらに向かってきて・・・そして、アサの目の前で立ち止まった。 「この一年生が、気に食わないわ」
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