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「おい、千鶴。見てくれ。」
「何ですか?」
見てくれと歳三さんが、差し出したのは俳句集だった。
「一句できた。一番はじめに千鶴に読んでもらいてーんだ。」
少し照れながら差し出す。
あんなに見せるのを嫌っていた歳三さんが、自信満々に見せれるのだから、きっと素敵な句ができたのだろうと、そっと手に取り読んでみる。
そこには、私たちのことが書かれていたのだ。
私と、このお腹の子に宛てた俳句…。
「歳三さん、とても素晴らしい俳句です。感動して涙が…」
「おい、おい、泣くことねーだろ。ほら、これで拭けよ。」
手拭いを渡され、涙を一杯ためた目に押し当てる。
「千鶴…」
「はい…?」
「まだ、お前にちゃんと言ってなかったことがあったな。」
目を細め、やわらかく微笑む歳三さんが千鶴の頭を撫でる。
「なんですか…?」
歳三さんはグイっと千鶴の体を引き寄せ、そのまま抱き締める。
「千鶴…お前を生涯、愛し続けると誓う。だから、こんな俺でもついてきてくれないか?」
「私は、歳三さんじゃなきゃ、嫌です。こんな、だなんて言わないでください。歳三さんに、ついていきたいんです。」
千鶴と歳三は深く、強く抱き締めあった。
「千鶴を誰にも渡さねー。腹ん中の子も必ず俺が守りぬく。」
「私も一生、歳三さんと共に歩んでいきます。愛しています。歳三さん…」
重なりあう唇は熱く、深く、二人の絆が深まっていく。
(ぜってー何があっても千鶴と、腹ん中の子は俺が守ってやる。)
歳三は、心の中で何度も誓った…。
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