夕暮れの国

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「太陽が沈まない国がありました。そこに夜というものはなくて、一日中、どんな人にも平等に、黄金色の光が降り注いでいました。名前もないこぢんまりとした国でしたが、夕焼けのとても美しい国だったので「夕暮れの国」と呼ばれていました。  海へ行けば、涙を流す女の人がいました。太陽の光を斜めに受けて、水面は黄金色に光っていました。どうして涙を流すのですか、と聞くと、海がとても美しいからよ、と女の人は言いました。確かに海は涙を流すほどに美しいものでした。  山へ行けば、何かを叫ぶ男の人がいました。太陽の光を斜めに受けて、下に見える街は黄金色に光っていました。どうして何かを叫ぶのですか、と聞くと、街がとても美しいからだよ、と男の人は言いました。確かに山から見下ろす街は何かを叫びたくなるほどに美しいものでした。  この国のすべてのものは、太陽の光を斜めに受けて光っていました。しかし同時にこの国のすべてのものは、暗い影に塗りつぶされていました。私は涙を一粒だけ流し、叫ぶかわりに何かを一言小さく小さくつぶやきました。影はとてもとても長く、とてもとても暗かったのです。」 ――― .
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