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春――それは、四季の始まりを告げる季節
花が咲き誇り、桜が新たな季節の始まりを歓迎している。
だが皆が皆、春を求めてる者ばかりではない。
新たな学年を迎える事に気怠さを感じるもの。入学早々またいじめが始まるのではないかと怯えるもの。
後輩をお守りを上司に無理矢理押し付けられたもの。リストラされ、この先の人生に絶望するもの。
そんな様々な想いが渦巻くな中、とある高校に通う少年達がいた。
ある少年はいつも通り気怠そうに登校し、ある少年は意気揚々と登校している。
時は、平成57年午前8時30分
先程の少年達、詰まるところこの物語の中心人物である『天崎蒼太(あまさき そうた)』と『煬閻焔不人(ようえん かずと)』の通う高校、『付喪神高校(つくもがみこうこう)』では現在、始業式が開式したばかりである。
いつもの如く付喪神高校、学校長『付喪栄一郎(つくも えいいちろう)』の演説さながらの長ったらしいお話の真っ最中だった。
「この季節はよく気が抜けると言われている。
しかし、君たちはこの私すら居眠りをこいてしまう凶悪な眠気に打ち勝つと信じているぞ。」
校長先生……それ俺らにいう前に自分どうにかした方がいいんじゃないですかね。
明らかに業務に支障をきたすでしょ。しっかりしろよ。
そんな阿呆みたいな突っ込みを心の中でしていると、急に校長の雰囲気が変わり、いつもの校長とは思えない真面目な雰囲気で話し始めた。
「『紅神陽(あかがみ よう)』……皆、名前ぐらい知っているだろう?
彼女は本当なら皆と同じように学校に登校し、勉学に励んでいたはずだったが、昨年……帰らぬ人となった。
押しつけがましいが君達は彼女の分も精一杯生きていかねばならん。
この先も本来なら彼女にも与えられていた筈の未来が君たちにはある事を努々忘れてはならない。」
今まで校長の話を聞かずに寝ていたものまでが起きて校長の話を聞き入っていた。
「……新年早々湿っぽい空気にしてしまったな、すまない。
ただ…ただ、今を精一杯生きてくれ。
それじゃ、新しい年を共に生きよう…私からは以上だ。」
そう言うと彼は壇上からはけていった。
普段の彼を知っている者からしたら、それはとても異様な光景だったのか。
教師陣ですら唖然としている。
いち早く硬直状態から復活したのが進行の教頭先生だった。
「……あっ!生徒起立!」
そこからいつも通りの始業式が進められた。
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